『沈黙 サイレンス』(2016年、アメリカ)――80点。スコセッシ新作、宗教とグローバリゼーション

『沈黙 サイレンス』(2016年、アメリカ)――162min
監督:マーティン・スコセッシ
原作:遠藤周作
脚本:ジェイ・コックス、マーティン・スコセッシ
撮影:ロドリゴ・プリエト
出演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、浅野忠信、キアラン・ハインズ、リーアム・ニーソン、窪塚洋介、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮・・・etc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

※リアルタイム映画評

スコセッシが長年、構想してきて、映画化されるという噂は耳にしてたが何年も待っていてすっかり忘れてた時期、2017年ようやく公開ということで、見に行きました。劇場。

遠藤周作の小説「沈黙」を、「ディパーテッド」「タクシードライバー」の巨匠マーティン・スコセッシが映画化。オール台湾ロケによる17世紀の日本の映像。アンドリュー・ガーフィールドをはじめ、キチジロー役の窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシといった豪華日本人キャストが集結。

◎あらすじ
キリシタンの弾圧が行われていた江戸初期の日本に渡ってきたポルトガル人宣教師の目を通し、人間にとって大切なものか、人間の弱さとは何かを描き出した。17世紀、キリスト教が禁じられた日本で棄教したとされる師の真相を確かめるため、日本を目指す若き宣教師のロドリゴとガルペ。2人は旅の途上のマカオで出会ったキチジローという日本人を案内役に、やがて長崎へとたどり着き、厳しい弾圧を受けながら自らの信仰心と向き合っていく。
<映画com>

BGMがあった記憶がない、静かで幽玄な自然美の映画であったが、突然始まる虐殺などの暴力シーンとのギャップに衝撃を受ける。

音楽はほとんどなくおとなしい、まさに沈黙の映画だが、2時間半という長さを感じないほど、寡黙だが強烈な暴力シーンが刺激的であり、言葉や演技、自然美の力を感じる。

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ポルトガルからマカオ、そして日本へ。奴隷貿易等の歴史がある、日本マカオのキリシタン時代を思い出す。

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主演のガ―フィールドも力のあるいい演技をしているのだが、なんだかんだで本作は日本人役者が西洋役者を食っているように感じる。グッドフェローズのレイリオッタみたいなもの。

強烈な個性と狂言役者的な立ち回りをする窪塚洋介。

「パードレ」という言葉の響きがなんとも強烈で、頭に残っている。

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2017-03-05_173319特に迫力があったのが、井上様役のイッセー尾形。全然知らなかったが、本作で最もいい演技してて、ものすごく迫力ある貫禄の役どころだったと思います。

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ヒール役ではあるが、知的で、かつ迫力がある。その他の役者も豪華なラインナップで、日本映画の顔が揃っているなと。

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テーマとしては非常に深く、信仰と大衆支配、神と救いであったり、政治と宗教、そしてグローバリゼーションという領域まで本作が問いかけるトピックは広がっており、原作の良さもあるが、17世紀を舞台に宗教とグローバリゼーションに大きな問いかけをしているようにも思えてくる。BREXITやトランプ大統領時代の反グローバリゼーションがトレンドになりつつある今の時代において、本作が上映されたことは、ある意味ではぴったりなテーマ&メッセージかもしれない。

それにしても高齢のスコセッシのエネルギーには圧倒されます。

もう80~90点クラスの映画を何本も作ってるのに、強欲な男たちを描いたウルフオブウォールストリートに次いで、次は180度変わって宗教テーマの寡黙で残酷な一作品。

日本人俳優もうまく使っており、彼が敬愛してる黒澤の域にはすでに到達している気がしました。

それにしても、金融の時代から一気に宗教の時代へ転換してきたスコセッシ監督の歴史自体が興味深い一本でした。

kojiroh

『聖の青春』(2016年、日本)――75点。伝説の棋士の映画


『聖の青春』(2016年、日本)――128min
監督:森義隆
脚本:向井康介
原作:大崎善生
出演:松山ケンイチ、東出昌大、リリー・フランキー、竹下景子、染谷将太、安田顕、柄本時生、北見敏之、筒井道隆・・etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

※リアルタイム映画評

飛行機の中で映画を探していたら、新作ラインナップに何気にあったので、鑑賞してみた。

実話の若く死んだ将棋棋士の物語ーー難病と闘いながら将棋に人生を賭け、29歳の若さで亡くなった棋士・村山聖(さとし)の生涯を描いたノンフィクション小説を、松山ケンイチ主演、監督は「宇宙兄弟」の森義隆、脚本を「リンダ リンダ リンダ」の向井康介。

◎あらすじ
幼い頃から腎臓の難病・腎ネフローゼを患い、入退院を繰り返した村山聖は、入院中に何気なく父から勧められた将棋に心を奪われる。師匠との出会い、そしてプロ棋士として羽生善治ら同世代のライバル棋士たちと死闘を繰り広げ、まさに命を削りながら将棋を指した村山聖の壮絶な一生が描かれる。羽生善治とは「東の羽生、西の村山」と並び称された村山。

<映画.com>

ほとんど前知識なしで見たのだが、主人公の型破りな人生と、それを埋める脇の俳優陣の層の厚さにも惹かれて、かなり面白く鑑賞できた。

リリーフランキーや染谷、安田ケンなど、日本映画を代表する顔ぶれが脇を固める。

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脇役がどれも秀逸で、映画としては非常によくできていると思いました。

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汚部屋での将棋と漫画とジャンクフードの生活。これが彼の求めた青春だったとは・・・何かを突き詰める人間の集中力、強い意志というものを実にユニークに、かつ現実的に表現できていたと感じた。

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将棋のことはよくわからない筆者ですが、羽生との対戦シーンの緊張感は舌を巻く迫力。何か将棋の神が降りているような、すごいものがあった。

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映画としての完成度だけでなく、村山という人物の人生を見るだけでも十分価値がある一本であり、かつ日本映画の顔が多数出演しているので、将棋と映画が好きな人なら必見かと思います。

将棋棋士なんて虚業のようなものかと思っていたが、食うか食われるかの厳しい世界なのだと感じられる。

尚、わたしは主人公が増量した松山ケンイチだということに気付かず、エンドロールでびっくりしました。それで+5点で、78点ってところですかね。将棋には今も今後も興味はありませんが、面白い世界だと勉強になりました。

以上、主演がだれかとか、前知識ない方が楽しめる一本かと思います。

kojiroh

『ザ・コンサルタント』(2016年、アメリカ)――85点。ニュータイプのアンチヒーローストーリー

『ザコンサルタント』(2016年、アメリカ)――128min
監督:ギャヴィン・オコナー
脚本:ビル・ドゥビューク
製作:マーク・ウィリアムズ、リネット・ハウエル・テイラー
出演:ベン・アフレック、アナ・ケンドリック、J・K・シモンズ、ジョン・バーンサル・・・・etc

【点数】 ★★★★★★★★☆/ 8.5点

※リアルタイム映画評

The Accountant

ザコンサルタントという今風な題名と、ベンアフレック主演というテーマに引かれて鑑賞。

ハリウッドありがちなクソ映画だと思って観ましたが、ずばり、想像以上に面白くてびっくりしました。

◎あらすじ
田舎町のしがない会計士クリスチャン・ウルフには、世界中の危険人物の裏帳簿を仕切り、年収10億円を稼ぎ出す命中率100%のスナイパーというもう一つの顔があった。そんなウルフにある日、大企業からの財務調査の依頼が舞い込んだ。ウルフは重大な不正を見つけるが、その依頼はなぜか一方的に打ち切られ、その日からウルフは何者かに命を狙われるようになる。
<映画.com>

王道のハリウッド路線で進むが、何か普通とちがう。
重苦しく、デビットフンチャー監督のようなダークな映像に、寡黙で神経質な主人公の異様なライフスタイルなど、アスペルがー的な人間としての共感を誘える部分もある。

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ベンアフレックというと、ユダヤ系で、自分自身もブラックジャックでカウンティングできることで有名なカジノプレイヤーであえるが、そんな彼の超ハマリ役でしょう。

数学の天才。自閉症・・・殺しのプロ。会計術もすぐれており、ガラスを使ってマーカーで計算するシーンのかっこよさは異常でした。こんなアンチヒーロー像をわれわれは待っていたのかもしれない。

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月曜日に生まれて、
火曜日に洗礼を受け、
水曜日に結婚して嫁をもらい、
木曜日に病気になった
金曜日に病気が悪くなり危篤
土曜日に死んだ
日曜日には埋められて・・・

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ところどころで散りばめられる呪詛のようなキーワードが、主人公の存在を大きくするフラグになっており、正直、すごくよくできた、サスペンスアクションだと思います。

終わり方はかなり雑な気がするのですが、展開のスピード感はかなり興奮しました。

各々の節税・不正会計スキームも、そういう金融な話が好みなわたしにとってはツボ。

また、The会計士シリーズで続編を待望したくなるほど、ベンアフレックの会計士、面白かったです。

kojiroh

『オアシス スーパーソニック』(2016年、イギリス)――75点。Oasisの歴史と未来への警告ドキュメンタリー


『オアシス スーパーソニック』(2016年、イギリス)――128min
監督:マット・ホワイトクロス
製作総指揮:リアム・ギャラガー、ノエル・ギャラガー、アシフ・カパディア、ジュリアン・バード、ジョセフ・バリー・Jr.
出演:リアム・ギャラガー、ノエル・ギャラガー・・・・etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

※リアルタイム映画評

2009年に解散したイギリスのロックバンド「オアシス」のドキュメンタリー。

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リアム&ノエル・ギャラガー兄弟への新たなインタビュー、バンドメンバーや関係者の証言、名曲の数々をとらえた貴重なライブ映像、膨大なアーカイブ資料・・・オアシスファンにはたまらないドキュメンタリー映画で話題を呼んでいて劇場に見に行きました。

◎あらすじ
1991年に兄ノエルが弟リアムのバンドに加入して「オアシス」が結成されてから、2日間で25万人を動員した96年の英ネブワースでの公演までの軌跡を追った。ギャラガー兄弟と、「AMY エイミー」でアカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞したアシフ・カパディアが製作総指揮に名を連ね、「グアンタナモ、僕達が見た真実」でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞したマット・ホワイトクロスが監督を務めた。
<映画.com>

すごいスピード展開でオアシスのスーパーソニックのようなデビューの軌跡をたどってくれて、興奮しました。

野暮でワイルドな口調のリアムのインタビューと、言葉は汚いが知的な側面をも見せるノエルの、対照的な兄弟のインタビューを交えて繰り広げられる音楽ストーリーにはファンではなくても音楽好きなら楽しめるでしょう。

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ともかく、この仲が悪くて、育ちが悪い、労働者階級層の公団に住んでためちゃくちゃな兄弟が一緒になって3年以上下積みして、一気に爆発したんだろうなと、オアシスがなぜ最速でデビューできたのか十分納得できる映画になっていた。

ノエルは猫型、リアムは犬のように一人ではいられずと、ノエル自身が語っていたシーンがこの兄弟の特徴を最も表してるなと、ノエルの知的なインタビューにはたびたび関心。ソングライティングだけではない、彼こそキーマン。みんな重要ではあるが。

個人的には成功ストーリーで終わってしまったが、その後の解散の話までストーリーを伸ばしてほしかった。

今後もおそらく再結成はなさそうだが、
ノエルの最後の方の、
「自分たちがインターネット登場後の最後の世代で、それゆえ公共団地出身のバンドマンになれた、今後、そういう労働者階層から自分たちのようなバンドがでないだろう」

と、危機感を持った警告をかましており、
ノエルはインターネットによって誰でも評価される時代なんかなく、逆に格差が広がっているとも言いたそうな口ぶりであり、インターネット全盛期の音楽シーンを否定的に語っている部分が最も本作のメッセージだった。

それを伝えるために、彼らはこの映画を作ったのだろうと感じる。

ともかく、ロック音楽好きな人は間違いなく楽しめる映画です。

PS Live foreverが、本作で素晴らしさが一番伝わってきたナンバー。

kojiroh

『後妻業の女』(2016年、日本)――70点。高齢化社会コメディなサスペンス映画。


『後妻業の女』(2016年、日本)――128min
監督:鶴橋康夫
脚本:鶴橋康夫
出演者:大竹しのぶ、豊川悦司、尾野真千子、長谷川京子、水川あさみ・・etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆☆/ 7.0点

※リアルタイム映画評

黒川博行の「後妻業」を、大竹しのぶと豊川悦司の共演で映画化。「愛の流刑地」「源氏物語 千年の謎」の鶴橋康夫が監督、小夜子役を大竹、柏木役を豊川が演じ、尾野真千子、長谷川京子、永瀬正敏らが共演。

映画館での予告編でよく見て、インパクトがあったので、気になって飛行機の中で視聴してみました。

意外とコメディとしてもリアル高齢化社会ドラマとしても見ごたえあり。

◎あらすじ
結婚相談所主催のパーティで知り合い、結婚した小夜子と耕造。2年後に耕造は死去するが、娘の朋美と尚子は、小夜子が全財産を受け継ぐという遺言証明書を突きつけられる。小夜子は、裕福な独身男性の後妻となり、財産を奪う「後妻業の女」で、その背後には結婚相談所所長の柏木の存在があった。一方、父親が殺害されたと考える朋美は、裏社会の探偵・本多を雇い、小夜子と柏木を追いつめていく。

<映画.comより>

ずばり、見ごたえあるコメディタッチのサスペンス映画。

こちらも、現代の高齢化社会の中で必要悪のような存在を実写かしており、映画のデキというより、このビジネスについての描写が見れてことが面白かったです。

後妻業ビジネスのディティールを、被害者、探偵、そして3つの巴のような構造で、大阪を舞台に展開されて、一見の価値は間違いなくある現代チックな映画です。

主演の大竹しのぶもいいですが、トヨエツです。なんと言っても、関西弁をしゃべるトヨエツに痺れる。
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今、トヨエツはこんな渋い演技をするんだと、素直に楽しめました。カネのやりとりや質屋、北新地での夜遊びなど、ディティールが非常に楽しめるビジネス映画でもある。

つるべいのサオ師の役柄や、脇役も冴えており、
「日本中が札束にもうとった・・・」の堅気じゃないかたり口など、
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かつ大阪文化前面に押し出しているので、関東圏の身としては大阪ノリが楽しめてよかったなあと。

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ただ一度みたらもうお腹一杯で、映画としてはなかなかサスペンスタッチで盛り上がる部分もありましたが、イマイチ展開が微妙だなと。

このテーマと貫禄ある演技人の活躍は一見の価値ありなので、後妻業ビジネスに興味ある方は必見です。

kojiroh

『君の名は。』(2016年、日本)――80点。青春×SFサスペンス、新感覚アニメ映画

2017-01-04_214833監督:新海誠
脚本:新海誠
原作:新海誠
製作:川村元気、武井克弘、伊藤耕一郎
音楽 RADWIMPS
出演者:神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子・・etc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

※リアルタイム映画評

日本のみならず、世界中で大ヒットと大絶賛を記録している、Your name

劇場には足を運ぶことのなかった筆者であえるが、このたび、飛行機の中で視聴することが出来たので、レビューを書きます。

○あらすじ
。1000年ぶりという彗星の接近が1カ月後に迫ったある日、山深い田舎町に暮らす女子高生の宮水三葉は、自分が東京の男子高校生になった夢を見る。日頃から田舎の小さな町に窮屈し、都会に憧れを抱いていた三葉は、夢の中で都会を満喫する。一方、東京で暮らす男子高校生の立花瀧も、行ったこともない山奥の町で自分が女子高生になっている夢を見ていた。心と身体が入れ替わる現象が続き、互いの存在を知った瀧と三葉だったが、やがて彼らは意外な真実を知ることになる。
<映画Com>

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ずばり、文句なく面白い!!
そしてキャラクターがみんな愛らしく、感情輸入でき、とにかく可愛いです。

男も女も、うごきやしぐさ、日常的な何気ない仕草が本当に可愛いなと、昨今の日本アニメのクオリティの高さに関心しました。

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ぶっちゃけ、キャラはかわいいけど、主人公が入れ替わる日常が繰り返されて、日本の首都圏一極化と過疎化を象徴するような現代テイストな入れ替わりモノかなと思っただけで、興味深さを感じつつも、少し陳腐だとも思っていました。

しかし、後半です。

すべては後半の、青春ドラマから一気にSFサスペンス路線へ進むストーリー展開は圧巻でした。

深海監督がアニメ会のタランティーノだと賞賛される理由もうなずける。

ぶっちゃけ、青春ドラマとサスペンスを融合させて、絶妙な温度感でコラボしており、めちゃくちゃ面白かったです。

10年に一本ぐらいの傑作かもしれない。

個人的に奥崎先輩のキャラが萌えました。

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そうした青春ドラマの萌え要素ありつつ、一気にサスペンス路線へ駆け抜ける展開が圧巻で、かつソウルメイト的な、人間の魂の存在や輪廻転生を訴えかける、過疎化に便乗して伝統的な仏教的価値観のようなシャーマニズムというか、とにかく人間の魂の存在を伝えようとする熱があり、素直に感動しました。

といっても、筆者はアニメ映画ぜんぜん趣味ではないので、まあ、83点ってとこです。

あと、うるさくポップに鳴り響く RADWIMPSの音楽が個人的には安っぽくて致命的に嫌な点でした。アニメアートになりそうな作品だったのが、急に安っぽくさせている気がしてしょうがない。

けど、だれもが一見の価値ある太鼓判アニメ映画です。シンゴジラみるよりこっちですね。

ともかく、2016年は面白い映画がありすぎました。

kojiroh

『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(2016年、アメリカ)――75点、20年ぶりのクソ映画超大作


『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(2016年、アメリカ)――120min
監督:ローランド・エメリッヒ
脚本:ニコラス・ライト、ジェームズ・A・ウッズ(英語版)、ディーン・デヴリン、ローランド・エメリッヒ、ジェームズ・ヴァンダービルト
原案:ディーン・デヴリン、ローランド・エメリッヒ、ニコラス・ライト、ジェームズ・A・ウッズ
出演者:リアム・ヘムズワース、ジェフ・ゴールドブラム、ジェシー・T・ユーシャー(英語版)、ビル・プルマン、マイカ・モンロー、セーラ・ウォード、ウィリアム・フィクナージャド・ハーシュ、ブレント・スパイナー、ヴィヴィカ・A・フォックス、 シャルロット・ゲンズブール、アンジェラベイビー・・・etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

※リアルタイム映画評

この日のために、20年待ってました!!

ウィルスミス出世作の、1996年に製作・公開され、世界中で大ヒットしたSFパニック超大作「インデペンデンス・デイ」の20年ぶりの続編。制作費1.60億ドルの今年最高傑作&大作のSFスペクタクル映画がやってきた。

監督は、前作と同じく巨匠ローランド・エメリッヒ。

戦闘機パイロットの主人公ジェイク役を「ハンガー・ゲーム」シリーズのリアム・ヘムズワースが演じ、ビル・プルマン、ジェフ・ゴールドブラムら前作から続投。

このたび、クソ映画人友達と一緒に、劇場に見に行きました。

○あらすじ
エイリアンの侵略を生き延びた人類は、共通の敵を前にひとつにまとまり、回収したエイリアンの技術を利用して防衛システムを構築。エイリアンの再来に備えていた。しかし、再び地球を目標に襲来したエイリアンの兵力は想像を絶するものへと進化しており、人類は為す術もなく、再度の絶滅の危機を迎える。
<映画COMより引用>

相変わらずクソ映画ノリが連続して、大いに笑いました。ベタベタな敵対関係の仲間と、奇跡的に一緒に生き延びて、偶然的すぎるストーリー展開で人類の未来が開かれてゆく過程は突っ込みどころ満載で楽しかったです。

キャストも豪華。 シャルロット・ゲンズブールが登場しててびっくり。こんなハリウッド商業大作に出演するんだなと。

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QQでの通話、中国の牛乳、最高責任者、そしてヒロイン、アンジェラベイビーと、中国資本の飛躍にも本当にびっくりした。中国が大手スポンサー? いまやヒロインは中国系っていう時代なんだなと。超美人なので文句なしですが。

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しかし、前作より巨大な敵の出現により、世界がめちゃくちゃになるシーンの迫力には驚かされました。これぞ、映画館でみる映画です。そして中国人観光客の表情もシリアスで笑えました。

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ネタバレになりますが、96年のインディペンデンスデイは本当に大傑作クソ映画で、テレビ放映で見て、盛大に笑わせていただいた一作。特にラストに大統領が演説と共に自ら出動するシーンは爆笑しました。

今回も、同じく爆笑必須なシーンが満載で、ローランドエメリヒッヒ監督のクソ映画は本当に外すところが無くて安定感ある。

とにかく、前大統領もばっちり登場し、中国資本の進出なども映画に描かれており、非常に現代を象徴する描写も多く、大変楽しく鑑賞できました。

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大統領が「女」という設定があり、そのオチも、ある種、未来を予言しているような内容もある、政治色も匂わせる、非常に興味深い一作。

クソ映画としては堂々の95点作品です。

次回作も控えているそうなので、クソ映画ですが、また劇場に足を運ぼうと思います。

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『シンゴジラ』(2016年、日本)――80点。12年ぶり、新感覚・ゴジラ映画


『シンゴジラ』(2016年、日本)――114min
監督:庵野秀明(総監督)、樋口真嗣(監督・特技監督)
脚本:庵野秀明
音楽:鷺巣詩郎、伊福部昭
出演者:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、市川実日子、高橋一生・・・etc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

※リアルタイム映画評

『シン・ゴジラ』・・・2016年7月29日公開の日本映画で、ゴジラシリーズの第29作、『ゴジラ FINAL WARS』以来約12年ぶりの日本製作のゴジラシリーズ。

さて、豊作映画が多い筆者はよく劇場へ行くが、予告編を見て是非見たいと思った映画の1つでもある、シンゴジラが評判がいいので、ポケモンGO→シンゴジラ、というブームの流れを感じ、さっそく劇場で鑑賞した。

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◎あらすじ
2016年日本映画。ある日突然東京湾で水蒸気爆発が起きた。すぐに総理の耳にも入り慌ただしく動く日本政府。その原因は海の中に潜む巨大な生物ゴジラだった。目的も正体も分からないその生物ゴジラに翻弄される日本。そんな中内閣官房副長官を務める矢口はその存在に対抗する術を見つける。しかし遠くの国の人間は核を使い街もろとも破壊しようと考えていた
<映画ウォッチより>

まず、こんな怪獣映画、観たことがない、という衝撃があった。

ゴジラシリーズなのに、妙にグロテスクで、巨大生物を会議~メディア報道で真実を解明してゆき、その解決策をさぐるという流れなのだが、国際社会を舞台にして、妙にリアルでありつつ、シュールに物事が完了の会議と共に進んでゆく。2016-08-05_140917

これはゴジラという大スペクタクルを舞台にしつつ、会議映画であり、人間ドラマにもなっている。

今風なオタクで早口なキャラも登場し、頭の回転が速い系のストーリー進行になり、とにかくスピーディーで盛り沢山だった。

登場人物もすごく豪華で、日本映画の名わき役といえるような俳優がここぞとばかり出演している。

柄本明、大杉漣、國村隼、ピエール瀧、さらにどこで出てたか分からないところで、KREVAとかいるし、シンゴジラはすごい映画プロジェクトだったんだなと関心。

 

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ハードワークに危機に対して仕事を進める中でこんなせりふを言う。

「日本はまだまだやれる。捨てたもんじゃない」

この映画を見て、わたしは邦画を馬鹿にしている人間であるが、同じような感想を抱いた。日本でこんな面白い実写映画が作れるのだなと。

ただキーマンは、アニメ出身の記載の庵野監督のセンスが全てだろうと思う。

キレのフォントを駆使しつつスピーディーに物語が進み、グロテスクな怪物が進化してゆく中での人間ドラマは、エヴァ的だなあと本当に関心しました。2016-08-05_141311

ものすごい制作費をかけていそうだが、なんと15億円で作った模様。

実写映画の邦画は基本的にGOMIばかりだと思っているが、アニメや漫画畑出身の鬼才が実写を作るとなかなか傑作が生まれるものだなと。

今後も庵野監督の実写映画に期待したいと思います。

原発事故の当時のニュースを思い出させらるようなシーンも。2016-08-05_1412132016-08-05_141111

それにしても、目が丸出しのグロテスクなゴジラが大田区を進行して瓦礫まみれになる光景なんかは、311など大地震を彷彿させるデキバエで、劇場で見てよかったなと思える一作でした。

 

追記、尚、モノのクローズショットなど、商業映画とは思えない芸術的な表現も散りばめられていて、EVAを作った監督だからこそ、実写でもその芸術性を活かしている点が素晴らしいと思いました。

kojiroh

『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』(2016年、アメリカ)――75点。新しい形の戦争ドキュメンタリー


監督:マイケル・ムーア
製作:マイケル・ムーア、ティア・レッシン、カール・ディール
製作総指揮マーク・シャピロ
出演:マイケル・ムーア・・etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

※リアルタイム映画評

今年はドキュメンタリー映画が秀逸。今年公開のドキュメンタリーで注目の一作、「ボウリング・フォー・コロンバイン」や「華氏911」のマイケル・ムーアによる「世界侵略」をテーマにしたドキュメンタリー作品。

軍事戦争ではなく、アイディアを奪いに行く形の”戦争”とは・・・。

◎あらすじ
度重なる侵略戦争が良い結果にならなかったというアメリカ国防総省幹部からの切実な悩みを持ちかけられたムーア。そこでムーアは、自身が国防省に代わり、「侵略者」となって、世界各国から「あるモノ」を略奪するために出撃することを提案。ムーアは空母ロナルド・レーガンに搭乗し、ヨーロッパを目指すが……。
<映画.comより>

うーん、ずばり、本作は優れたグローバル社会のドキュメンタリーであり、多様な国の社会実験的なかたちで成り立ったライフスタイルを記録している。

映画というより、情報番組的な面白さだ。

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相変わらず巨体、なんでこんな太ってんだといつも突っ込みたくなる。だが貫禄が出ているなあと。

さてアメリカ高額医療を批判した『シッコ』にも通じるが、あれと違うのは、本作はほぼ単独でムーアが世界へ出ていること。

被害者とストーリーを進めていったシッコとは、また少し意味が違う。

が、本作が提供する情報は実にユニークで、世界は広いのだなと、広い視野を持てる、自国の閉鎖性や問題点に悩んでいる人が見たら、非常にすっきりし、それこそ多くの発見がある映画であろう。
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それにしてもオーガニックで昼にフランス料理とか長期休暇豊富なイタリアとか、土日勤務厳禁なドイツとか、自然主義的な生き方ができているんだと、多様化とグローバリゼーションで潤って成長してきたアメリカが筆頭とした多国籍企業に批判的な構図にも思える。

コカコーラを休職のときに飲んでいるムーアの姿がなんだかブラックジョークに感じた。

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イタリアで昼になると一斉に帰宅し、家族と食事をする光景なんかも、同じ先進国でも仕事と人生の関わり方がこんなに違うのかと興味深い一本だった。言語上では知っている内容でも、映像化してみてみるとまた違う発見がある。

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しかし、非常識でガラパゴスだといわれるアメリカであるが、未だに世界の中心を担う存在であり、それは欧州とは違った形での長時間労働を従事している人が多いからなのかもしれないとも。

そしてムーア監督のように、自国のダメなところを拾い上げて改善する意識を持って世界に映画として発信できるメディアの役割を担える人物がいる時点、やはりアメリカは日本のような閉鎖的な国よりも全然常識的で素晴らしい国だなと比較してしまった。

ともかく、世界を股に駆けてアイディアを奪いに行く行動を、戦争や侵略とたとえてコミカルに独自の視点で映画を進める、そのアイディアこそ本作のベース。

だが結局、そのアイディアの根源は、もうすでにある、「幸せの青い鳥」のようなものだった。旅人が最後にいたる結論のような内容。

多くの情報、様々な社会実験で多様な社会が構成されているが、根底にあるものは、既に過去にあったものだった、的な。

正直、テレビドキュメンタリーでいいじゃん、と思える内容ではあるが、これを劇場映画にできる業こそ、ムーアなのだなと思わされた。

ともかく、多様化、グローバリゼーション、そうしたものを振り返って原点回帰して、新しい時代の材料(アイディア)を探そうと言う、この2016年、EU離脱や大統領選などで、時代の転換期にありそうな時期に、必要とされる映画だなと感じた。

kojiroh

『FAKE』(2016年、日本)――90点。鬼才・森達也×佐村河内、羅生門的なドキュメンタリー

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監督:森達也
プロデューサー:橋本佳子
撮影:森達也、山崎裕
編集:鈴尾啓太
出演:佐村河内守・・・etc

【点数】 ★★★★★★★★★☆/ 9.0点

※リアルタイム映画評

2014年にゴーストライター騒動で日本中の注目を集めた佐村河内守。
彼を1年4ヶ月に渡って追った、ドキュメンタリー映画。
監督は、オウム真理教を題材にした「A」「A2」の鬼才、森達也。

詐欺師、ペテン師と糾弾されて表舞台から消えた男のドキュメンタリーがまさか撮られていたとは・・・一体どんな展開でドキュメンタリーとしてオチるのか、最後の12分がどうのこうのと、ネット上でも話題になっていたので、わたしはインディーズな横浜のミニシアターに足を運んで鑑賞した。

○あらすじ
聴覚に障害を抱えながら「交響曲第1番 HIROSHIMA」などの作品を手がけたとし、「現代のベートーベン」と称された佐村河内。しかし音楽家の新垣隆が18年間にわたってゴーストライターを務めていたことや、佐村河内の耳が聞こえていることを暴露。佐村河内は作品が自身だけの作曲でないことを認め騒動について謝罪したが、新垣に対しては名誉毀損で訴える可能性があると話し、その後は沈黙を守り続けてきた。本作では佐村河内の自宅で撮影を行ない、その素顔に迫るとともに、取材を申し込みに来るメディア関係者や外国人ジャーナリストらの姿も映し出す。
<映画.com>

さて、手話を駆使した佐村河内夫妻の会話が、まず強烈に頭に焼きつく。

わたしはこの事件を深く知らずに、実は耳が聞こえた男がゴーストを使って音楽ビジネスをしていた、ぐらいのレベルの理解だった。しかし、現実はもっと複雑で、黒か白か、というよりもグレーな話であったが、マスメディアが分かりやすい話に置き換えて、ジャーナリストが売名行為や復讐のために相手を徹底的に糾弾して、そういう極めて感情的で、自分都合な報道をしているように、本作から伝わってくる。

基本的に密室劇であり、森達也と夫妻と猫がメインキャラクターだ。2016-06-26_163556

猫は人間に見えない、その深い目が何か真実を見ている気さえしてくる。本作はこの猫が非常に重要な役割を成している。

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マスコミの誘導や時の流れによって成功者になった新垣。
ジャーナリストの大賞を受賞した神山。2016-06-26_163342

結果として売名に成功して、守さんを踏み台にして成功したとも言える人々がいる。

大人数で押しかけてお笑い番組に出演させようと押しかけるフジテレビのシーンと、困惑する猫の視点が、本作が最も否定したい部分を象徴している気がした。海外の本質的なジャーナリストの取材に比べると、日本の番組は大衆の娯楽と笑い作りしか考えていない、そんな低俗さを考えさせられた。

色んな真実を映し出しているが、あまりにも色んな見方ができる映画であるが、この夫妻、2人が素晴らしいのだ、結局は。

・豆乳をがぶのみする守
・ケーキを差し出す奥さん
・警察と消火器のフラグ2016-06-26_163539

それにしても、この映画は製作者の吐息が伝わってきて、それが自分の心にはものすごく痛烈に刺さる。どんでん返しがあるかもしれない、出演者と製作者の疑いさえも映像にゆれる。

どちらの言い分が真なのか――羅生門のような展開もある。現実の事件が無数の視点から証言が得られる。

無数の解釈ができる映画なので、ディティールを書くことは省略するが、・・・結論として、ペテン師である守さんという真実は変わらないが、佐村河内守という人間が非常に魅力的な人物であることは間違いなく、彼のカメラ写りが非常にいいから、自分の映画のために撮影を開始したインタビューに答えていた森監督の気持ちがよくわかる。

俳優としても、ベランダでタツヤさんと一緒に夕焼けと共にタバコを吸うシーンなんかは実に芸術的でもある。薄暗い部屋でのやりとりも。

思いのほか、本作が話題になって、ロングランになりそうな勢いができてきたので、この作品を契機に、さらなる物語の展開を成した、『FAKE2』を、待望したいと思います。

これで終わりではないだろ?? 頭の中でたくさん音楽が鳴っていて、この映画から新しいスタートが切れる、そんなエネルギーを感じた。2016-06-26_163437

「僕を信じますか?」
「僕は守サンと心中します」

全てがFAKEかもしれない。複雑怪奇で白黒ハッキリせず、グレーなこの世の中で、信じるものがあり、愛があるということが素晴らしいのかもしれない。

以上、歴史的な詐称事件のその裏側を見事に潜入して懐に入れ、アナザーストーリーをフィルムに収めることができた、数年に一本の傑作ドキュメンタリーだと思います。

kojiroh